中国情報局@北京オフィス

最近、米メディア大手のBloombergが「中国が米国の天然ガスを欧州に高値で転売している」という内容を報道しました。 「中国石化の子会社が、高価格の天然ガスをヨーロッパの港に3回に分けて供給する大型受注を獲得したばかり」という内容。そして偶然なのか、この3回で中国が欧州に販売した高価格ガスの出荷先は全てアメリカのエネルギー会社なのです。 中国は天然ガスの輸入国なのですが、こんな大事な時に天然ガスを輸出するのか?でもそこには十分な理由があるようです。まずはアメリカと中国の貿易の関係性。 2018年から始まった米中の貿易戦争では、トランプがハイテク製品を中国に輸出したくないのに、米中貿易の輸入超過をなんとかしたいというジレンマがありました。 そこで着目されたのが資源。交渉の結果として中国がアメリカから700億ドルの天然ガスと大豆を輸入することになったのです。 天然ガスに関する具体的な成約は指定価格で毎年400万トン、期間は20年間の購入契約になります。そして、絶対に契約違反できないよう相当高額な違約金が約束されているのです。ご存じでしたでしょうか。 しかし、中国はすでにロシアと関係があります。ロシアとは長期間にわたる天然ガスの契約を結んでいます。ウクライナの件でロシアはヨーロッパとアメリカから制裁を受けていますので、ロシアとしては中国へ輸出したいニーズが当然高くなります。 つまり中国の天然ガスは余ることになりました。天然ガスの保存にはお金がかかるし危険性が高いので、できれば順調に消費されることが望ましい。 一方で、ヨーロッパではあまりにも天然ガスが不足で値段も高揚しています。このタイミングが絶妙で、アメリカから輸入する分のアメリカからの運送開始と同時期というわけです。 結果的には、中国が余った天然ガスをアメリカの港からヨーロッパに直接運送。アメリカから直接ヨーロッパに送るのは当然、アメリカ→中国→ヨーロッパと経由するよりも運送料が安いし、保存問題も解決し、相当な収入が入りますね。 ヨーロッパは市場価格よりちょっと安い値段で不足で困っていた天然ガスを素早く輸入できたし、これがロシアからのものでもないです。まさかのウィンウィンウィン 一つの船で10億ドルの利益が出るので合計45船でトータル450億ドルの儲けになります。素晴らしいのは、金儲けのために売ったではなく、あくまで仕方がなく売って結果として人助けに繋がっているという建前になるところ。 中国とアメリカの貿易維持のために必要なのか、中国でのエネルギー消費需要のためなのか。結果として戦争という中で瞬時に判断して多額の利益を上げるところは流石だなと感じてしまいます。